私のプリニウス [文学]
http://d.hatena.ne.jp/ophthalmos/20110211/1297358645
ophthalmosさんの「プリニウスの本のことなど」という記事を読んで、ある本を思い出しました。
それが澁澤龍彦の「私のプリニウス」
図書館で借りてきて、久しぶりに読みました。
それからこちら↓も借りました。
残念ながら「植物編」は近くの図書館にはありませんでした
さて、澁澤龍彦の「私のプリニウス」ですが…
「プリニウス博物誌」にツッコミを入れまくるというような内容です。
例えば…
「海ウサギと海の動物たち」では
第九巻ではインドの海ウサギは有毒だと書いてあったのに、第三十二巻では、人間と接触しただけで死んでしまうというのだから、プリニウス先生、ここでも矛盾したことを壁で描いている。まあ、それはよいとしても…云々
「薬草と毒草」では
魔女キルケーに毒薬入りの酒を飲まされて、オデュッセウスの仲間たちはことごとく豚に変えられてしまうが、オデュッセウスだけはヘルメスに教えられて魔よけの薬草モーリュの匂いをかいでおいたので、キルケーの魔法にはかからなかった。 (中略) さて問題の薬草モーリュとは何なのか、昔から古典学者たちはいろいろ仮説を提出しているが、いまにいたるまで結論は出ていないようである。普通には球根のあるニンニクの一種と見られているらしいが、詩人で特異な神話学者ロバート・グレイヴスのように、野生のシクラメンではないかと主張している者もあり、まったく雲をつかむようである。
ただ、このプリニウスの記述は混乱していて、最初は例のごとくホメーロスやテオフラストスから借りた文章であるが、実際に彼が見たという後半の部分では、ニンニクともシクラメンともまったく違った、彼だけのモーリュを描いているように思われる。どう考えたって、根の長さが三十歩尺(約九メートル)もあるようなニンニクやシクラメンがあるはずなかろう。
「宝石」では
水晶雪の凝結したものだという説は奇異に思われるかもしれないが、ローマ時代には実際、水晶はもっぱら万年雪のあるアルプスから産したので、水晶と雪が同一化されたとしてもふしぎはなかった。この説は十六、十七世紀ごろまで受け継がれる。プリニウスはここでも東洋だのインドだのを持ち出しているが、どうか笑って見すごしていただきたい。そのほかにも空想的なことがずいぶん書かれていて、おやおやと思っていると、突然、「なぜ水晶は六角の面をもって形成されるのか」というような一行が出てきて、私たちをはっとさせる。これがプリニウスの憎いところである。
…といった具合です。
本の半分はプリニウスの引用ではないかと思うくらい、引用が多いです。
彼がどれほどこの「博物誌」に魅了され、読み込んだかがうかがえます。
個人的な感想を言わせてもらえば、プリニウスも澁澤龍彦も非常に面白い内容なのですが、欲を言えば挿絵があればもっと良かったと思います。
ophthalmosさんの「プリニウスの本のことなど」という記事を読んで、ある本を思い出しました。
それが澁澤龍彦の「私のプリニウス」
図書館で借りてきて、久しぶりに読みました。
それからこちら↓も借りました。
残念ながら「植物編」は近くの図書館にはありませんでした
さて、澁澤龍彦の「私のプリニウス」ですが…
「プリニウス博物誌」にツッコミを入れまくるというような内容です。
例えば…
「海ウサギと海の動物たち」では
第九巻ではインドの海ウサギは有毒だと書いてあったのに、第三十二巻では、人間と接触しただけで死んでしまうというのだから、プリニウス先生、ここでも矛盾したことを壁で描いている。まあ、それはよいとしても…云々
「薬草と毒草」では
魔女キルケーに毒薬入りの酒を飲まされて、オデュッセウスの仲間たちはことごとく豚に変えられてしまうが、オデュッセウスだけはヘルメスに教えられて魔よけの薬草モーリュの匂いをかいでおいたので、キルケーの魔法にはかからなかった。 (中略) さて問題の薬草モーリュとは何なのか、昔から古典学者たちはいろいろ仮説を提出しているが、いまにいたるまで結論は出ていないようである。普通には球根のあるニンニクの一種と見られているらしいが、詩人で特異な神話学者ロバート・グレイヴスのように、野生のシクラメンではないかと主張している者もあり、まったく雲をつかむようである。
ただ、このプリニウスの記述は混乱していて、最初は例のごとくホメーロスやテオフラストスから借りた文章であるが、実際に彼が見たという後半の部分では、ニンニクともシクラメンともまったく違った、彼だけのモーリュを描いているように思われる。どう考えたって、根の長さが三十歩尺(約九メートル)もあるようなニンニクやシクラメンがあるはずなかろう。
「宝石」では
水晶雪の凝結したものだという説は奇異に思われるかもしれないが、ローマ時代には実際、水晶はもっぱら万年雪のあるアルプスから産したので、水晶と雪が同一化されたとしてもふしぎはなかった。この説は十六、十七世紀ごろまで受け継がれる。プリニウスはここでも東洋だのインドだのを持ち出しているが、どうか笑って見すごしていただきたい。そのほかにも空想的なことがずいぶん書かれていて、おやおやと思っていると、突然、「なぜ水晶は六角の面をもって形成されるのか」というような一行が出てきて、私たちをはっとさせる。これがプリニウスの憎いところである。
…といった具合です。
本の半分はプリニウスの引用ではないかと思うくらい、引用が多いです。
彼がどれほどこの「博物誌」に魅了され、読み込んだかがうかがえます。
個人的な感想を言わせてもらえば、プリニウスも澁澤龍彦も非常に面白い内容なのですが、欲を言えば挿絵があればもっと良かったと思います。
2011-03-12 11:51
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コメント(2)
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昔の人って、イメージが豊かというか、読んでる昔の人も意味わかってたんだろうかて思ってしまうぐらい独創的なたとえが多いですよね^^;汗☆
by マイン (2011-03-25 22:05)
マインさま、返事が遅くなってすみません。
みんな本当に想像力豊かですよね。というか知識がない部分を想像力で補っていたので、どんどん面白い方向に広がっていったのかな、なんて思ったりもします。古典から学ぶことは本当にたくさんあります(^-^)
by Tarot-Reader (2011-03-28 22:16)