XXI「世界」のカードに描かれた女性 [タロット]
Hinemos amo!(http://d.hatena.ne.jp/nisuseteuryalus2/)の管理人・ひねもすさんから「世界」のカードに描かれている女性について質問がありましたので、今日は彼女について。
(グリモー社版マルセイユ・タロットの「世界」)
個人的にはニコラ・コンヴェル社のマルセイユ・タロットが好きなのですが、一般的にマルセイユ・タロットというとグリモー社のものが有名なようです。
マルセイユ・タロットは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで大量生産されたタロット・カードで、当時のヨーロッパと言えばキリスト教一色。ですので、このカードの元になったものは、やはりキリスト教由来のものという説が有力です。
一つは聖母の被昇天。
まずは「被昇天」という言葉の説明から。
天に昇ったのなら「昇天」でよさそうなものですが、わざわざ「被」という言葉がついています。
その違いは、このラファエロの絵画でもわかるよう、キリストは自力で天に昇っています。
ラファエロ「キリストの昇天」
それに対し、聖母は天使たちによって、天に召されています。これが「昇天」と「被昇天」の違いです。
グイド・レーニ「聖母の被昇天」
「聖母の被昇天」については残念ながら、聖書の記述ではありません。
正教会の「生神女就寝祭」、つまり聖母マリアが永眠された日を記念する日が、西方に伝わり天に召された日となったものです。ですので、各地に諸説ありますが、「世界」カードのリースと腰のあたりに漂っている布に関連のある記述がありましたので、紹介します。
「聖ヨハネが、イエズスの聖遺品を整理しておられた、お疲れの様子の聖母マリアを寝台に連れていき、横たわらせる。それらの聖遺物を聖ヨハネに託し、いくつかの遺言を述べられた後、詩篇118、42~43:1.2.3、22、1、主祷文、ガブリエルとエリザベトのことば、シラの書24:11-46を、最後にマニフィカトを唱えられた。聖ヨハネがそれから気づくと、聖母は臨終を迎えられた後だった。部屋をかたづけ、明かりを灯し、オリーブの花と実を摘んできて冠をつくり聖母の周りを飾った。それから何日か徹夜の祈りをして、疲れの為に睡魔に襲われていると、天国の光の中に天使達が現れ、奇跡的に開かれた部屋の天井を通して、聖母の御体をあげられた。あたりの異常に気がついた聖ヨハネは目をこすりつつ天井にあいた穴から天使の群れに伴われて天国に昇っていく聖母マリアの御体がその脱魂から解け、その足で立つのをしっかりと見、また天から迎えに降りてこられた御子イエズスから抱きしめられ、一緒に天国に昇っていくのを見た。その後、聖母が横たわっていた枕と毛布それから食器などを主の聖遺物と一緒にし、イエズスの御教えを述べ伝えるためにでかけた。 」
※マリア・ワルトルタ…1897年イタリア生まれ。1920年鉄棒で背中を打たれ負傷、1934年以来病床生活にはいる。その中でイエズスからの啓示を受け「神と人なるキリストのポエム」を著す。
つまり、このリースは聖ヨハネが聖母のために作り、布は聖母が横たわっていた毛布ということです。
また、出所は不明ですが、聖母の被昇天に立ち会えなかったトマが不信の念を表明すると、中空から聖母がまとっていた帯が降ってきたとか。(「黄金伝説」にありましたっけ!?)
また、リースについては、「聖母の戴冠」に由来するという説もあります。
カラッチ「聖母戴冠」
王冠ではなくこんなリースだったのでは、という説ですね。
そして、もう一つのキリスト教由来の説は、マグダラのマリアの被昇天。
ランフランコ「マグダラのマリアの空中浮遊」
「空中浮遊」とありますがおそらく「被昇天」のことだと解釈してよいと思います。
彼女なら全裸でもいいような気がします。
タロットの場合は、おそらくこの両マリアが混同されているのでは…というのが、一般的な見方となっています。
(グリモー社版マルセイユ・タロットの「世界」)
個人的にはニコラ・コンヴェル社のマルセイユ・タロットが好きなのですが、一般的にマルセイユ・タロットというとグリモー社のものが有名なようです。
マルセイユ・タロットは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで大量生産されたタロット・カードで、当時のヨーロッパと言えばキリスト教一色。ですので、このカードの元になったものは、やはりキリスト教由来のものという説が有力です。
一つは聖母の被昇天。
まずは「被昇天」という言葉の説明から。
天に昇ったのなら「昇天」でよさそうなものですが、わざわざ「被」という言葉がついています。
その違いは、このラファエロの絵画でもわかるよう、キリストは自力で天に昇っています。
ラファエロ「キリストの昇天」
それに対し、聖母は天使たちによって、天に召されています。これが「昇天」と「被昇天」の違いです。
グイド・レーニ「聖母の被昇天」
「聖母の被昇天」については残念ながら、聖書の記述ではありません。
正教会の「生神女就寝祭」、つまり聖母マリアが永眠された日を記念する日が、西方に伝わり天に召された日となったものです。ですので、各地に諸説ありますが、「世界」カードのリースと腰のあたりに漂っている布に関連のある記述がありましたので、紹介します。
「聖ヨハネが、イエズスの聖遺品を整理しておられた、お疲れの様子の聖母マリアを寝台に連れていき、横たわらせる。それらの聖遺物を聖ヨハネに託し、いくつかの遺言を述べられた後、詩篇118、42~43:1.2.3、22、1、主祷文、ガブリエルとエリザベトのことば、シラの書24:11-46を、最後にマニフィカトを唱えられた。聖ヨハネがそれから気づくと、聖母は臨終を迎えられた後だった。部屋をかたづけ、明かりを灯し、オリーブの花と実を摘んできて冠をつくり聖母の周りを飾った。それから何日か徹夜の祈りをして、疲れの為に睡魔に襲われていると、天国の光の中に天使達が現れ、奇跡的に開かれた部屋の天井を通して、聖母の御体をあげられた。あたりの異常に気がついた聖ヨハネは目をこすりつつ天井にあいた穴から天使の群れに伴われて天国に昇っていく聖母マリアの御体がその脱魂から解け、その足で立つのをしっかりと見、また天から迎えに降りてこられた御子イエズスから抱きしめられ、一緒に天国に昇っていくのを見た。その後、聖母が横たわっていた枕と毛布それから食器などを主の聖遺物と一緒にし、イエズスの御教えを述べ伝えるためにでかけた。 」
マリア・ワルトルタによる聖母のご臨終と披昇天より
※マリア・ワルトルタ…1897年イタリア生まれ。1920年鉄棒で背中を打たれ負傷、1934年以来病床生活にはいる。その中でイエズスからの啓示を受け「神と人なるキリストのポエム」を著す。
つまり、このリースは聖ヨハネが聖母のために作り、布は聖母が横たわっていた毛布ということです。
また、出所は不明ですが、聖母の被昇天に立ち会えなかったトマが不信の念を表明すると、中空から聖母がまとっていた帯が降ってきたとか。(「黄金伝説」にありましたっけ!?)
また、リースについては、「聖母の戴冠」に由来するという説もあります。
カラッチ「聖母戴冠」
王冠ではなくこんなリースだったのでは、という説ですね。
そして、もう一つのキリスト教由来の説は、マグダラのマリアの被昇天。
ランフランコ「マグダラのマリアの空中浮遊」
「空中浮遊」とありますがおそらく「被昇天」のことだと解釈してよいと思います。
彼女なら全裸でもいいような気がします。
タロットの場合は、おそらくこの両マリアが混同されているのでは…というのが、一般的な見方となっています。
タロットと四元素(天使・鷲・牛・獅子) ―キリスト教― [タロット]
(ニコラ・コンヴェル社版マルセイユ・タロットの「世界」)
(ウェイト版の「運命の輪」)
(ウェイト版の「世界」)
(トート・タロットの「全宇宙」)
この四隅に描かれた、人(または天使)・鷲・牛・獅子はそれぞれ風・水・地・火の四元素を表すことは、タロットをされている方ならご存知のことだと思います。
これらのシンボルはキリストとケルビムを描いたイコンにも見られます。
※「イコン」とは聖書・天使・聖人などにおける重要事項を描いた絵画のことで、主に正教会で見られます。
「その顔は人間のようであり、四つとも右に獅子の顔、左に牛の顔、そして、四つとも後ろには鷲の顔を持っていた。」
エゼキエル書1:10
ただし、人・鷲・牛・獅子のキリスト教に由来する意味はこれだけではありません。