聖書の中の女スパイ ~ラハブ~ [歴史・人物]

聖書の中の女スパイと言えば、一番に思い浮かぶのは「士師記」のデリラではないでしょうか。しかし、彼女に関しては、さんざんオペラや映画になっているので今更、語るまでもないでしょう。

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なので、今日は「ヨシュア記」のラハブをご紹介したいと思います。
Rahab5.jpg
少し時代背景を書かせていただくと、モーセよりも前の時代から、イスラエル人はエジプト人から奴隷として扱われていました。そこでエジプトなんか脱出しようと言い、モーセと共に「約束の地 カナン」を目指すのですが、志半ばでモーセは神に召されてしまいます。この辺が「出エジプト記」の大まかなあらすじです。

このモーセの後を継承したのが、弟子であり、軍人でもあったヨシュア。カナンに行くためには、エリコ(ヨルダン川の近く)を攻略しなければいけません。ヨシュアは一刻も早く戦を終わらせるために、二人のスパイをエリコに送ります。しかし彼らはすぐにエリコ軍にバレて、追われる身となります。

ここで彼らが逃げ込むのが、今回のヒロイン・ラハブの家。
聖書には彼女が娼婦であったという記述はありませんが、見知らぬ男性が容易に出入り出来る家であたりから、そう思われるようになったのかもしれません。

以下、ラハブを娼婦だと仮定して話を進めます。
このスパイ二人は、客のふりをしてラハブの家に逃げ込みました。職業柄、二人が「割礼」していることに気付いたラハブはすべてを理解します。
その頃、エリコ軍は虱潰しにこの二人の行方を追っています。
ここで、ラハブには二つの選択肢が用意されています。

・二人をエリコ軍に引き渡す
・二人をかくまって逃がす

ラハブは条件付きで後者を選択します。
rahab.jpg

ラハブの出した条件とは「イスラエル軍がエリコに攻め込んできたときは、自分と自分の家族は助けてほしい」というもの。
もちろん、家族と自分の命を守るためだけに、こんな一か八かの賭けはしません。おそらく彼女は現状に不満を抱き、何かしなくては、と打開策を探っていたのではないでしょうか。
そして何より、聖書に書かれているように、イスラエルの神を信じていたから、という理由が大きいでしょう。
私は主があなた方にこの地をお与えになることを知っており、それは私たちを覆う大きな恐怖で、この国に住む者は皆あなた方への怖れに融けんばかりです。私たちはあなた方がエジプトから出るとき、主が紅海をどのように干上がらせたか聞きましたし、あなた方が完膚なきまでに破壊した、ヨルダンの東にあるアモリの二人の王、シホンとオグに何をしたか聞きました。それを聞くとき、主、あなた方の神は上は天に、下は地にまします神でいらっしゃると知り、私たちの心は融け、皆の勇気はあなた方のためにくじけるのです。 ですから、私があなた方に親切を示したことで、私の家族にも親切を示してくださると主にかけて私に誓ってください。私の父母、兄弟姉妹及びそれに属する者を助け、私たちを死から救ってくださるという確かな印を見せてください。
(ヨシュア2:9-13)



その後、イスラエル軍はエリコに攻め込み、ラハブとその家族以外は全滅してしまいました。

何がここまで、ラハブとイスラエルの民を強くしたのでしょうか?おそらくこの部分に集約されていると思われます。
強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。あなたの神、主が、あなたの行く所どこにでも、あなたとともにあるからである。
(ヨシュア1:9)



後に彼女は、イスラエル人のサルマという男性と結婚し、ボアズという息子をもうけます。そしてボアズはルツと結婚します。そう、「ルツ記」のルツです。そしてルツはエッサイという息子を産みます。
キリスト教に詳しい方はもうお気づきかもしれませんが、エッサイはダビデ王の祖先です。そしてダビデ王はイエス・キリストの祖先…。(「マタイによる福音書」を参照してください)


ラハブとデリラの決定的な違いは、デリラは自分の民族を守るため自分の意志とは無関係に行動し、ラハブは自分のいる共同体への裏切り行為を自分の意志で決断したところです。



余談ですが、紅海に生息する怪物にラハブというのがいます。
ラハブ怪獣.jpg
元はエジプトの守護神だったのですが…。

もしかしたら、エジプトに甚大な被害を及ぼした、娼婦・ラハブと何か関係があるのでは、と勘繰ってしまいます。
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マイン

エジプトにもドラゴンのような守護神がいるのですね。
てっきり顔が鳥で体が人間のトト神みたいなものばっかりかと思ってました^^;
聖書のお話、大変勉強になります。
by マイン (2010-06-12 08:59) 

Tarot-Reader

エジプトも南北で神話に違いもありますし、そうかと思うとすごくタオイズム(道教)と似てるところがあったり…。
こういった勉強は本当に興味が尽きません。

マインさんもタロットの肥しのために、ぜひぜひ聖書をお読みください。別に布教してるわけではありませんよw
by Tarot-Reader (2010-06-13 01:49) 

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